NHKで好きな番組がいくつかあって、「switchインタビュー達人達」というのもその一つ。


以前から興味を持っていた古武術の甲野善紀氏が登場するといういうことで、楽しみにしていました。


甲野氏の興味深いところは、武術を生活の中に活かしているところなんですね。


武道は、心身の使い方を追求していくと、ついに精神面を極めるところまで行ってしまうようなところもありますが、甲野氏の古武術は、人が生きていく生活の中で効率のよい身体の使い方を教えてくれます。


それを介護の分野に広めてくださった功績は大きいです。


昨日は、片桐はいりさんが甲野氏を指名してインタビューになったようです。

なんで彼女が?と思いましたが、53歳になったはいりさんが、演劇の中での身体の使い方を本当に真摯に追求し始めたところ、行き着いた先が甲野氏、ということでした。

 スポンサードリンク


武術と演劇は近い関係?

最初に、甲野氏が仕掛ける面白い実験。


○はいりさんを前に、甲野氏が手を出し、それを彼女が振り払うという設定。
この場合、払うはいりさんのほうが有利な立場です。


はいりさんが両手で甲野氏の手を振り払うところを何度か繰り返すと、今度は甲野氏が同じように手を出すにもかかわらず、はいりさんが振り払う前に飛ばされてしまう、ということが起こります。

思い切り転倒するんですね。

この時甲野氏は何を変化させたのか?

○相手の背後1m先くらいに空洞ができていて、そこに自分が吸い込まれていくようなイメージを持って相手に手を出すだけで、相手は転倒するほど強く身体を引いてしまうわけです。


この時のイメージは“リアル”だったとのこと。
本気で演じなければ技はかけられない、とも言っていまいした。


ストーリーの中に自分がいて、演じる切ると相手が飛んでくれる。
だから、武術と演劇は近いのだとのこと。


この時の気持ちとしては、相手をやっつけようという気はなくて、心底申し訳ない気持ちで、空洞に吸われるイメージをすると、そのイメージが強いほど、パワーが強くなるとのことでした。

“あがり症”は治せるか?

はいりさんが舞台に立つときの緊張感を緩和する方法を聞いていました。


ここでまた“実験”。

○立っているはいりさんに突然木刀で甲野氏が斬りつける体勢。
当然はいりさんは、ビクッとして手で防御姿勢を取り、身体は後ろに飛び退く感じ。


そこで甲野氏が手の組み方をおしえます。

○両手の指を蓮の花のように力を入れて折り曲げ、両手の薬指だけを引っ掛けるようにします。


そして同じように甲野氏が木刀で切りつけようとするが、はいりさんは先程のように飛び退かない。
先ほどのような恐怖心がないようなのです。


その比較をするために両手指を離し、2.3回ジャンプして“残留効果”を消してから再挑戦。


すると、最初の時と同じような恐怖心が起こるわけです。

○なぜ、この手指の組み方をすると恐怖心が薄れるのか?
・薬指を絡めている状態だと、横隔膜が下がるのです。
・びっくりすると上半身が縮み上がる。


つまり、怖いと思う条件を、指を絡めることで物理的に止めているわけです。
そうすると怖い感情がわかなくなる。
怖いはずの場面にリアル感がなくなるということなんですね。


この“リアル感”は感情を伴います。
だから、手を組むことによって感情を止められるということ。


この時、はいりさんは「普段は身体と感情がリンクしていることが想像しにくい」と言っていました。


そして、母親を亡くした時の話をしました。
はいりさんが母親をお風呂で発見したそうです。
その時からお葬式が終わるまでも、大きな溜息をつくような呼吸ばかりで、息が苦しかったそうです。


そのことを行きつけの整体の先生に伝えたら、「横隔膜がブロックされているから」と言われたとのこと。


ショックな映像とか事件が起きた時には、横隔膜が固まって身体が動かなくなることがあると言われたそうです。

身体と心がつながっているということは普段からわかっているはずなのに、こういう具体的なことを体験者から聞いていみると、「身体って、なんだかすごい!」と、はいりさんと同じように叫びたくなりますね。

スポンサードリンク

“鷹取の手”とやり方とは?

手のひらの窪んだところのことを「労宮」といいますね。
この場所が、“鎮心の急所”として知られています。


ここを押すだけでも、横隔膜を下げることができるそうです。
そして、気持ちを落ち着かせることができます。


でも、甲野氏はもっと効果のある方法を考案しました。
それが、この番組で紹介された不思議な手指の組み方です。


調べてみると「鷹取の手」という名称がついていました。


甲野氏がはいりさんにおしえた手指の組み方が「鷹取の手」のことでした。
詳しいやり方を説明します。


・親指、人差し指、小指の先端を寄せるようにくっつける。
その時、労宮(手のひらの窪み)がもっと深くなるような感じで。

・両手を同じような形にしたら、薬指を反らせるために両薬指同士を引っ掛ける。

・そのまま方を広げ、胸が左右に開くようにする。



試してみるとわかりますが、スッと気持ちが落ち着きます。
「不安」に対して、距離ができるような感じ、でしょうか。


週刊朝日が“鷹取の手”を取り上げたときの記事も参考にしてください。

https://dot.asahi.com/wa/2015011300110.html

最後に

この番組の中で、はいりさんが、興味深いことを話していました。


「演劇は努力だらけ。一生懸命やるとか、努力するとかが続くとチカラの限界が訪れる。あるときから全部脱力、何も考えないみたいな方向にシフトしたら、急にいろんなことがうまいことまわり始めた」とのこと。


これを受けて、甲野氏が、「やらない、ということが大事。身体もどう使わないようにするかが大事」。

例えば、何かをするとき、まず動くのは「手」ですね。
手は器用だから、すぐ自分の出番だと思う。
これが、できない元凶を作っているということなのです。


アコーディオンが弾きたいけど、重い、というはいりさん。
その場で甲野氏が細いヒモを彼女にたすき掛けすると、する前より明らかにアコーディオンが使いやすい状態になっているんですね。持ったときの重さが違う。

これも、たすき掛けしたヒモが、ここにヒモがあるということで、かかった負荷を体中に分散させることになる、ということなんです。

人の体は本当に不思議です。
古武術を知ることで、介護や、生活の中の動き、心の問題でも、いろいろな分野で解決の糸口が見つかる可能性が感じられます。


スポンサードリンク